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日常の眺めに変化を与えてくれます。……


ようやく発売されました、年に一度のお楽しみ。


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2023年12月5日 初版発行 / 白泉社 / 1320円(税込み)


毎回(過去のニフティブログでも)ご紹介し続けてる、

この描き手さんの新刊。


これまで通り、

この世界観の街に引っ越したい、って思わせてくれる、

ワンダーJAPON” 的なマンガ。


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今回も凝った趣向の表紙です☆











タイトルにもなってる一編その商店街を解剖するような、

描き手さんの偏しゅうぶりの窺えるそこに目を凝らしてしまいます。


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新刊に収められてる16の小編に、いつもどおり

ユニークで、妙で、夢幻的で、日常の眺めが違って見えてくる

そんなエッセンスに詰まったものばかり。


「正しいコンビニおにぎりの開け方」だとか、


「建物のビルとは、ビルの芽、が育つことで立ち現れるもの」だとか、


「商店街とは、その入口から奥へ向かって寂れていくもので、

 その寂れた後方の古い区画を商店街の先頭へ移転させることで

 “商店街の新陳代謝を図っている”、つまり、ちょっとずつ前へ前へ

 移動してってる(生きもののような)もの」だとか。


などなど。


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そんな小編のなかでも、ちょっと魅かれたこの一編に……。


主人公の運転していた車が、

一台の車と激しくぶつかる事故を起こしてしまうんです。

それはもう、運転席から外へ放り出されてしまうくらいの、

お互いの車がバラバラに!ってほどの。


それなのに、なんと! 

運転手にふたりとも無事なのもさることながら、

両方の車が、大破にあるほどだったのに、そうにないんです。

それぞれの車の部品が混ざり合う具合に、組み上がってるっていう……。















そんなこと、普通に考えたら「あり得ない」って思えますよね。

でも、確率って目で見たなら「あり得る」と。


地球に生命が発生する確率は、

25メートルのプールにバラバラにした腕時計の部品を投げ入れて、

水流でたまたま元通りに組み上がる可能性と同じ、で、

そんな星の上で起きた事故なんだからあり得なくはない、って。


お話はその後、

「あり得る」可能性をもとにして両車を元通りにしようと……。


天文学者フレッド・ホイルって人の述べてる、地球上に生命誕生の確率に、

「廃材置き場に竜巻が通過したあと、その廃材でジェット機ボーイング747が

 でき上がっているようなもの」

というたとえがあって、腕時計のもその類例。


この一編を読んでて、

人それぞれに願うことが途方もない確率の上にあったとしても、

可能性に決して無ではない、って思いに、勇気をもらいました。


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参考までに ~ 過去の、同じ描き手さんによる単行本のご紹介ページ。

 去年のご紹介

 おととしのご紹介

新刊の帯にもありますけど、今刊で10冊目(インディーズのも含めて)。


恐らく来年中に出るはずの11冊目に待ちどおしい、

今年中にどうにか発売されてうれしい新刊なんでした。


世の中を知る入門書のような。……

 

秋ごろより続いていた繁忙からぼちぼち抜け出せたような、

そんな気配。この記事が作成できてるのだから、きっとそう。

これであとはもう難なく年末年始を迎えられる!


って、そう、もう年末なんですよね、

どうしてもこの感に否めない、“一年って過ぎるのに早い”……。


それなら、

そんなスピードに乗せて今年のいやなことはパッと忘れて、

いいことだけを大切に持って迎えましょう新年2024年!


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繁忙だった毎日に、それでも休憩タイムだけは絶対確保。

そんな一服どきに、糖分とともに摂取にあったなかの一冊に

これをご紹介。












2023年 9月10日 初版発行 / ぶんか社 / 640円(税込み)


「ちび本当にあった笑える話」ってシリーズの217号目。


全国から寄せられた体験談をもとに描かれた四コママンガが

いっぱい読める、みたいな。何篇かのエッセイ風ショートマンガも。


表紙を含めて400ページを、

一服どきにちょっとずつめくりめくりしてました。


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載ってる四コママンガの内容は、表紙にあるとおり。


おもに軟派で下世話な雰囲気もまじえながらの、

職業にあれこれの、働き手でなければわからないウラ話、

消費者側からしてみれば知らなきゃよかった、逆にいえば

知ることができて今後の役に(立つのか立たないのか)……

そんなふうな。


ページをめくればこんな感じ。










どれくらいほんまのことが載ってんのかわからへんけど、

世の中を支え続ける生産消費サービスそこにある裏側の暴露。


それがあくまでも体験談マンガって体とわかってても、

決して明るくない世情を思うと、

薄っすらと毒におかされていくような感じも。


社会を構成するヒトその裏側、暗部の共有、とも読めるふうに、

217号も続く所以に ( ゚д゚)ウム


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そんな「ちび本当にあった笑える話」ってシリーズ、

ほかに既刊の各号のメインテーマを調べてみたら……

それを適当に拾ってみると、


・ザ☆密告まつり

・仕返しするぞ!! / 痛快!仕返し大集合

・スカッと復讐

・お仕事ウラのウラ / 世の中ウラのウラ

・最凶!恐怖体験 / 真夏の恐怖話

・やっちまったGP

などなど( ぶんか社のHP より)


表紙を見る限り、世のヒトのありように

カリカチュアライズのオンパレードみたいな。

中身にどんな感じなのか、読んでみようかしら。


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ということで、今回は

世の中(ヒト)を知る入門書ともいえそうな一冊のご紹介でした。

お手に取るなら、ウラを返せばって読み方に、注意してご覧あれかも。


6/9(金)から映画が公開されるということで。……


その原作の、今回ご紹介の漫画がはたして

どんなふうに映画として調理されてるのか……


同じ原作者の「子供はわかってあげない」の映画はよかったので、

うん、おいしくあればいいなぁ……。


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KCデラックス  全3巻 各715円(税込み)/ 講談社


単行本として最終巻・第3巻が2020年9月9日に第一刷として

リアル&ネットの店頭に並んだこの作品。


個人的に、絵の抜け感がちょうどいい。

そこにお話しが、人間の単純とはいかない思い、色合いが

すんなり溶け込んでる、って感じがいい。

全体から受ける軽妙洒脱といった印象。

でも内容にさっぱりした感はないんですけどね。


そんな雰囲気で作品のバランスが成り立っている感に、

それゆえ、実写映画化が……心配……。


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あらすじはマンガペディア(ネタばれ注意)を見てもらうとして。


ほんと、

読んでて物語を馴染みやすくさせる、

ページ全体から漂う余計な力みのない雰囲気、感触。


そうあって、

シェアハウスにひとつ屋根の下で暮らす主要な二人それから

ほかのキャラクターたちに与えられた設定・相関による、











現実では早々お目にかかれない “フィクションならでは” の物語、

クリエイティブ性。そこんところの面白さ。


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全巻読了されてる方は、どう思われたでしょう。












この物語の展開にキーでもあるところの感情に、「怒る」。

主要キャラクターがうまく怒れないんですよね、

抱えるところの思いに。


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人は許せないことがあっても、うまく怒ることができない。

 ただただ単純に怒ることだったらできると思うんですけどね、

それはもう馬鹿みたいになって暴力的に猟奇的になって、なら。


人は(大なり小なりとしておこう)煩悶する生きものだから、

単細胞でない限り怒りの衝動に抑制・ストップがかかるものと。

「あー腹立つ!その元凶どうにかしてぶっ壊してやりたい!」

って湧き立っても、思うままに破壊し尽くしたりはしない

(というのが理性の上に一般的、なんて言い方すると安っぽい?)。


あ、でも待って、現実を見渡したら……

例えばニュース・報道で触れるところにその通り、

暴力的に猟奇的に狂う域へと入ってしまう人が多々あって、

それがもう当たり前に日々の暮らしに溶け込んでる。


そう考えると、この作品って、

「怒る」その感情による煩悶、苦しみから湧き立つ怒りの衝動

それに任せて乱暴に突っ走らんとすることへの抑制 その欠落が

やすやすと見える日常を踏まえた、よくできた愛々しいファンタジー、

とも読める、みたいな……。


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映画はまぁ一応原作からの産物ではあるけれど別物ということにして、

この漫画は楽しめますので、未読の方がおられましたら、

お手もとにいかがでしょう。


ええ、芸能ニュースに触れて思い出したんです……


今月11月1日の、

ジャニーズ関連の話題に「滝沢秀明」のあれ。

今はツイッターアカウントも開設されて、

これから「冒険家」としての活躍に……。


で、タッキーといえばってことで、

わたくし的に思い出したのがこれだったんですけど、

みなさまも実写ドラマ化したあれと紐づいてますよね、

それってベーシックなことですよね?


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2008年 6月 10日 初版発行 / 新書館 / 630円+税


単行本じゃなくて、文庫本の方。

なぜ文庫本かっていうと、携行用として愛着があってことで。


ちっさくて細い線文字とか読みにくいとこもあるけど、

それは単行本の方をさらってるからだいじょうぶ。

愛読者のみなさまもおなじですよね?


久しぶりに読み返してみて、やっぱりいい感じ。


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作者プロフィールはウィキを読んでもらうとして、

この作品の紹介にも、知らない人はウィキ調べて、っていうか、

本棚に常備の漫画ですよね。それもベーシックなことですよね?


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とりあえず、千影さん!







ギャルソンの影!













泣いてる影!












店員の宝、
ギャルソンの鏡の影!








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アニメ化もされてますけど、どうしてか、

実写ドラマ化の方が印象に残ってるっていう。


実写ドラマ化にあたりエッセンスとして使えるとこだけを

抽出って感じでしたけど、あ、使用楽曲の演出が

ミスチルにオンリーだったから? 

それ、インパクトありましたもんね。


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タッキーの話題からの、取りあえず再読!

ドラマも再観!


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コロナ、第8波……収拾しそうで

まだまだそうはいかないのって……なんなんでしょうね。

作為的なものを感じなくもないような……。


疲れてる時はやっぱり現実逃避薬が必要……

 

ですよね。ということで……。


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2022年 10月 5日 初版発行 / 白泉社  980円+税


これまでも、

この描き手さんの新刊は出るたびにご紹介してますね。


この描き手さんのを読んでると、ほんと、

キャラクターらの住んでるこんな町・世界があったら

引っ越して暮らしたいわって思わせてくれます。


およそ年一の周期で現世に現れる、

出版物に単行本という形態を取ったもう一つの世界線、みたいな。


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今回の新刊に、毎度の妙加減にもちろんなのですけど、

ワンダーJAPON(旧JAPAN)的な、

タモリ倶楽部にあった企画ネタみたいな、

そんな感じのところにも惹かれます。






タコ滑り台、ワンダーです。






コンクリートブロックの意匠、
タモリ倶楽部でもありましたね。






ガードレールの意匠って
現実にも色々ありそう。









マンホールカードってありますけど、
ヤフオクで調べたら、大阪吹田市の、
1枚の売値に35800円?!








タモリ倶楽部の企画であった、
森ビルの巨大都市模型のあれ、
一般に非公開なのですよね……。





もし、この世界観が映像化されたなら……、

漫画とはまた違った楽しさが動きを伴って見られるので、

そうなったらいいな。


背景は3D・CGIで構築して、

キャラクターは2D・手描き線で表現、みたいなね。


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今回もいつもどおりの雰囲気に楽しい新刊ですので、

よろしければお手もとにいかがでしょう。


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新型コロナ、どうなんでしょうね……、

なかなか心配にやみません。

間もなく迎える冬に、インフルエンザにも注意ですね。


いつ映像化されるんでしょうねこれって……

 

と、わたしは思ってたりするんですけど、この漫画に。

もしされたなら、実写がいいかな。

群像ものだから、出演者で華やかになりそう。


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2022年8月30日 第一刷 / 太田出版 800円


最新刊に4巻、やっと出たって感じ。


あとがきにもありましたけど、

これまで一巻ずつ出るごとの間合いが二年、三年って、読者待たせ^^

それでも待つんですけどね。


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淡島歌劇学校を舞台に、そこの生徒である

予科生に本科生、そして卒業生に個々のキャラクターを

各話ピックアップして読ませる、そんな群像もの。


お話に描かれる、夢や憧れ、抱える人間関係……。

“淡島歌劇学校にまつわる”という大枠・物語上の設定はありますけど、

現実の色んな状況に置き換えられるリズムで読めます。


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この漫画で目を引くあたりに、たとえば……














なにも描かれていないように見えて、

脳内に絵が炙り出されてくるようなコマ運びのところ。

そんな表現・テクニックを用いる漫画にまぁ沢山あるわけですけど、

しっくりくるって思える作品の一つ。


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次の5巻で終わってしまうのはほんとうに残念なんですけど、

とにかく、その数年後の発売に待ち遠しくある、

今回ご紹介の青春群像ものに「淡島百景」。

(一巻から)一読におすすめです。


マヨネーズ好きにもそうでない方にも……


今年1月に紹介した小説「TRY48」、現時点(新潮六月号)までの展開に、

主人公・百合子がTRY48の悪魔セブンの一人としてアイドルデビュー。

寺山修司の指示のもと、週刊プレイボーイの巻頭カラーデビューで

ほかのメンバー全員とともに真っ裸にさせられ広いのっぱらを走らされたり

(そこを鋤田正義や荒木経惟など有名カメラマンらが撮影!)、

勝手に人ん家に上がり込んでアイドルする、といった

“勝手にアイドル宅配、ならぬ誤配!”なんてやらされたり。


これから先にどうなるのか、TRY48が世間の話題となり、

おっきなステージで大観衆の前で弾ける展開となるのでしょうか、

引き続き楽しみたのしみ……。


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それで、「TRY48」からの流れで、

寺山修司っていうと映像作品を多々手がけていて、その中に

「トマトケチャップ皇帝」ってタイトルの作品があって、

まぁ内容は置いといて、そのタイトル。


それと親近感おぼえるタイトルの漫画があったなってことで^^

今回、それをご紹介。


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1996年 10月31日 初版 / 1000円(税込み)


この単行本には、

1話ずつ読み切れるお話が13話収められています。

描きおろしを除いて、すべて

月刊ガロ(1994~1996)に掲載されていました。

ええそうですね、この作品は、ガロ系、といえましょう。


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この作品は、

“小学生のはっちゃん(←マヨ吸ってる子)”を

主人公に(そうじゃないお話もありますが)、

その世界に同居する他のキャラクターとの妙から

編み出されるお話を楽しむって感じ。


※ はっちゃんはマヨネーズ好き。

  1日に10本は吸っちゃいます。



以下に抜粋で、

こんな感じのキャラクターが登場して、

全体的にエキセントリックな、

そんなお話が編まれていきます。


道の水たまりやプールにはった
氷など、町にはる氷を食べるのが
大好きな「こおりひめ」。



死期迫るお姉さんとの約束通り、
亡くなったお姉さんの体を
食べたことで、そのお姉さんが
自身の細胞にかけた呪い
(この世に生きたいとする再生の
呪い)にかかってしまう弟。



デパートの中で神隠しに遭い、
そこで暮らしている女の子。
デパートが建つ前の神隠しの森で
神隠しに遭い、そのままデパート
で暮らし続ける80歳の老婆。



大食いの見世物で稼いでいる、
肉体が食欲に飼われているような、
大食らいの女性。
※大食いの見世物の仲間に誘われ、
 マヨネーズ大食い少女として
 デビューするはっちゃん。



自宅に自分ひとりだけの安らげる
空間を欲する、常に鬱屈を抱えて
破壊&殺人の妄想に駆られる主婦。



陽があるときや月が明るいときは
スポーツバッグの中に隠れてやり
過ごす、“影”がない男のコ。




死んでも生き還ってしまう、
そのことに罪を抱いている姉妹。



おじいさんの残した
タイムマシーンの設計図を
受け継ぎ、ひとりこつこつと
作っているおばあさん。



意味もないのに形を変え、
恥もないのに赤く染まり、
知恵もないのに涙を流す、そんな
ほかの雲のように生きることを
やめようと考える、この世で
たったひとつだけ生きている雲。




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メインキャラクターのはっちゃんも、

その趣向や行動などに相当トリッキーな女のコです。

たとえば……


峠のばばあに喰われないよう
からだにからしを塗りまくる
はっちゃん。



突然亡くなってしまった
お母さんを生き還らせようと、
その遺体を背負い、
“ドクター真剣医”のいる屋敷を
探して富士の青木ヶ原をさまよう
はっちゃん。



やはりマヨネーズ好きの設定に
外せないこの場面に、
5段のマヨネーズケーキ!を作る
はっちゃん。

5段て……実際に作ったら
もう見てるだけで
胸やけどころではないレベル。




ほかにもトリッキーな感じで描かれています。


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どのお話もエキセントリックな感にありながら、

どこか、大人な童話、ともいえるような、夢の中のような雰囲気。


今回のご紹介に、

登場するキャラクターと絵の雰囲気から好みの針が触れたなら、

お話にもその針が触れることと思います。


古書店などで入手可能と思いますので、

よろしければお手にしてみてくださいませ。


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なお、この作者さんは小説も書いておられて

(単行本のタイトルに「イエロー」「刺繍天国」など)、

「マヨネーズ姫」のような味わいが楽しめます。

そちらもよろしければお手にどうぞ、なのですけど、

古書価格としてけっこう高値がついてるみたいです……。


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真夏日にすっかり突入ですね。

熱中症対策に、水分補給とともに、

周囲を見計らいマスク外して呼吸を整えましょう。


「わたしは真悟」で思い出した、これも機械に命の宿る漫画……

 

前回ご紹介の “芸術新潮「楳図かずお特集」” の中で

名作「わたしは真悟」を紹介するページがあるんですけど、

その単行本を久しぶりに読んでたら、


さとるとまりんがプログラムすることで命の吹き込まれる、その

機械なのだけれどまさに魂を宿した存在となる “真悟” に、ふと、


機械が人間となるみたいに命を宿す設定の漫画に

数知れないですけど、なのにどういうわけでしょう、

こんなのあったなって、かつて読んだこの作品の記憶が

ほかをさしおいてよみがえってきたという。


そこで、今回はそれをご紹介です。


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1982年2月1日発行 / 定価980円


まさに当時のニューウェイブにあぶらののった頃でしょう、

ひさうちみちおセンセーの作品集。


どの作品も、絵のタッチが初期の劇画みに抜けて

ポップともいえるイラストレーションふうみです。

けれど、内容の方は、ご存じのみなさまにはまぁそういうことですよね、

なかなかにアナーキーです、そして、なかなかにエッチです。


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この作品集に、

三編の連作のようなものが収められています。


「山本一郎」さんという名前のロボットについて、

その身の転じる先々で仕え働いてきた人生を描いた二編と、

その息子の孫「三郎」くんの人生を描いた一編。


で、「わたしは真悟」を介し思い出したのは、連作の中の、

山本さんの生まれた経緯の描かれたプリクエル的な一編。

以下に少々。
























ここから更にページは続く……。


お話は、触りにこんなふうで、

(まだ山本一郎という名前がつく前のこと)

ときに戦中、苦学生樋口さんの学費を稼ぐ手段として

夜店の的当ての機械仕掛けのオニとして生まれ

そのよくできた電子回路で人間性を宿し客を喜ばせていた山本さんが、

状況に転ずる中で辛うじて人型といえるような体を獲得し、

やがて引き取られる財閥の家でそこの令嬢に仕えながら、

あるとき軍人に目をつけられてお国の戦争のために仕えることとなり、

軍力増強に山本さん型兵器が造られて……


といった感じ。


見どころに、

引き取られた財閥そこの令嬢のいじわるにつくすことで

 “ヨロコビ” を獲得する、被虐性愛という人間性をも

真摯に獲得する山本さんにそのあたりかな。


お話自体、連作にほかの二編も加えて、

読者を特段笑わせたり泣かせたり熱く啓蒙したり

そのようなふうにはないのですけど、

淡々とひさうちさんリズムに語り調子で進んでいく

山本さんの人生というものに、

読者目線に身近な距離感でありながら、しかし

客観的に距離を置いてうかがっているようでもあるところに、

それがなんとはなしに映画監督・小津安二郎の作品テイストを

わたくし的におぼえたりする、

「山本さんのおぢいさんの青春」に一編。


   ……で、

   この作品を思い出したきかっけなのですけど、

   (ページ画像にもありますが)腕を獲得したときの姿が

   アーム型機械の “真悟” となんとなく重なるような……気がして、

   それでなのかな、みたいな。


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連作以外の作品にもちょびっと触れておきますと、

どれもがひさうちさん的アカデミックテイストにあふれております。


男女の出会い方について、女性のしくみについて、

運命に不幸というものについて、など、そういったものを題材として、

まぁ過剰にソフィスティケートされた感じに創作されてます。


たとえば一編に、










姿形に三文字で、アソコ、って言葉の主人公が、

それまで閉じ込められてたエッチな雑誌から自立を目指して出、

やがて言葉を求める元書道家であり画家志望のところでモデルを務め

その差別偏見のない眼によって芸術の域に描かれる、っていう、

そんなお話とかね。

(それ読んで、そういえば、と、日本ファンタジーノベル大賞の

 過去作を思い出しました。“バス停” が主人公の一編を)


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絵に成人向きでアレな感じなのがそこここに見受けられて、

ここではご紹介しにくいところもある今回の一冊、

古書店、ネットオークションなどで入手可能だと思いますので、

よろしければ一読いかがでしょう。