手元にあるのは旧版の単行本で、
年月が経ってるので紙の痛みにとても心配な状態。
復刊されてるのでそちらが欲しいんですけど……
旧版とおなじように入手困難で、どちらも古書店などで
売られてたとしても高値……1万円近いのとかやめてほしい。
そんな一冊のご紹介。
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1986年11月30日初版発行 / 1200円
短編一本と、表題作が収録です。
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表題作の方に、以下のようなぐあい。
お話は、
ひとりの少年(つんつん髪)を軸にして、
あるひと夏の時間が
幾つかのエピソードを介して過ぎ去っていくまでを描いたもの。
と、ざっくり言ってしまえばそう簡単なんですけど……
ページをめくるごとに登場するエピソードっていうのが、
たとえば、
「マンションから飛び降りる(人の顔をしていない)鳥男」
「船で釜焚きに務めていた際に魚雷の一撃で十日間海に流された大家さん」
「猟奇殺人に走る新聞配達員」「生徒会長の死」
「押し入れの中のブラックホール」……みたいな、
それぞれの関係性にまるでない調子。
そんな個々に色の違ったエピソードが連なり編まれてる本編なので、
理解になかなか一筋縄ではいかない展開。
お話があるようでいて、ない。
そんな調子で、ポップでアングラっぽさも漂う絵柄ともあいまって、
お話の表や裏を読むことにあれこれ楽しませてくれるような、
そこが心地よくて、また切なくもあって。
心地よくて切ない、って抱いてしまうのは、
まだ社会を知らない若い年代の頃(主人公の年齢)っていうのが、
(人によるのかもしれませんが)なにをするにも一貫性に欠けて
断片的なエピソードの連なったような日々を生きている、
それをページ越しに感じてるから、と。
その感じ、社会をいくらか知った者にとって、
ノスタルジーを味わってる、とも。
神戸の方を舞台にしてるところと、また、
死というモチーフがこれまた軽くページに現れてくる感じ、
どことなく村上春樹の小説の雰囲気をおぼえる、
「踊るミシン」。
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「踊るミシン」の前に短編があるのですけど、
そちらは“エルモア・ジェイムス”っていうアメリカの
ブルースギタリストの生涯を描いたもの。
表紙を入れて11ページの短編に、その描出の軽やかさに、
やはり音楽をモチーフにした村上春樹の短編っぽさを
おぼえもする一編。
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手に入る機会がありましたら(それも安値が望ましいです)
ぜひどうぞ。素敵な一冊です。
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この先どうなるかまだわからないコロナ……
注意の日々です。
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