「来てけつかるべき新世界」……


おおさか通天閣望む新世界エリアにそこのところの

わちゃわちゃがやがやにぎにぎしい日常と先端デジタル

テクノロジーとの混合に、それが新喜劇なスタイルへと

evolutionを遂げた、っていいたい、 

そんな戯曲を収めた一冊。


「来てけつかるべき新世界」

2017年5月10日 発行 / 白水社 / 2000円+税


京都に拠点の劇団「ヨーロッパ企画」の、

2016年・第35回公演(初演)、それから

2024年・第43回公演で再上演された、五話構成の戯曲。


   ~ ~ ~


近未来、おおさかは浪速区恵美須の新世界、

そこにある串カツ屋を切り盛りする本来店主の父親

(わけあってこもり中)の代わりに働くひとり娘の

マナツを軸に、まわりにいるむさくるしくもいとおしい

おっちゃんやら歌姫とか、そんな皆がデジタルテクノロジー・

デジタルガジェットにあれこれとはしゃぎほんろうもされつつ、

最後に訪れるシンギュラリティっていえる情景にほろりとくる、

SF人情喜劇。


   ~ ~ ~


ハイウェイが整備されて出前に宅配それに空撮や宣伝

そのほか飛んでるのに色々なドローン、レーザービーム

備えた警備ロボット、AI、VR、人工知能付きゴーグル、

ネットワークと繋がり串カツ揚げるロボットアーム、など、

それら登場する先端テクノロジーと登場人物たちとの

親和性がおかしみたっぷりに描かれてて、また、関西では

お馴染み新喜劇な感触で鋭く切り込んでる印象もあって、


マナツに好意を持ち串カツ買うのに東京から

おおさか新世界までドローン飛ばしてくるテクノさん、

いまや処理能力に高くて当たり前のCPU搭載の炊飯器

(ゴミ置き場に捨ててあったやつ)に将棋プログラム入れて

それと勝負し敗れてしまうイシダさん、

その炊飯器(電光掲示板を介してしゃべる)と

お笑いコンビを組むことになる芸人のキンジ、

飛田遊郭のりんねちゃんに実はVRのそれと気づかず

恋い慕うホンダさん、

などなど、


近未来のお話っていっても、登場人物一人ひとりの人間味に

01言語のテクノロジー味に染まってなくて

二度漬け禁止のソース味にあって、

そこのところにここちいい戯曲。何度読んでも愉しい一冊。


   ~ ~ ~


再上演、観に行きました。
(2024年9月、京都府立文化芸術会館)


初演時を収めた円盤も発売されていて、

多くの方へおすすめできるお芝居。


続編あったならめっちゃ嬉しい。

新たなテクノロジーの登場で騒動再びみたいな、はたまた

おおさか新世界とは別の場所&新たな登場人物で

わちゃわちゃする展開とか。


6 件のコメント:

  1. 匿名10:56

    こんにちは。個人的な好みですが、一人娘だからダイナミックな物語になるのであって、一人息子ではしょぼい物語になるような気がします。そこを性的少数者にすると、まるで違う話になりそうですが(笑)、新世界は夜勤明けの日雇い労務者が朝から酒を飲んでふらふらしていた頃からの馴染みのある地域なので、懐かしく思いコメントしました。

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    1. 匿名さんへ

      こんにちは。
      (同じ大阪新世界にそれと似た町が舞台で)一人娘が活躍するほかの作品に
      「じゃりン子チエ」がありますね。あちらはホルモン焼屋さん。
      主人公の設定に色々違えたならそれはそれでユニークな展開となりそうですが、
      たしかに今回の物語みたいにはいかないかもですね。

      新世界そのあたりにディープなところはまだまだ息づいてるのかなって
      思ってたんですけれど、開発の手もずいぶんと伸びているんでしょうか。
      海外からの観光客バックパッカーが安い宿泊施設を利用するのに増えてて
      かつての雰囲気も変わったことがニュースで取り上げられてましたが、
      そこのところに、ときのうつろい、ですね。。。

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  2. 大阪の新世界って、大都会の中にまだこんな昔の世界が残っているのか?と思う街です。
    昼間からお酒飲んでいる人、将棋を指している人、パチンコ店、ゲームセンター、レトロ喫茶、大衆食堂、串カツ、動物園、通天閣にビリケンと、新世界というより旧世界の街なのですが(笑)、だからこそ最新のテクノロジーとのギャップを楽しめるストーリーになっているのでしょうね。
    白水社って、フランス語習った時にお世話になった出版社ですが、こうした面白い本も出版されているんですね!

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    1. コウジ菌さんへ

      大都会のなかの、っていうところが大事な点ですよね。エアポケットのような。見えない力で守られてるような、とっても強い磁場を形成してる地域って印象です。
      そこに繁華で煩雑で人間臭さがあって、みごとなまでにひとのこころを打ってやまない世界がありますね。「新」にどれほどのものでしょう、と「旧」が言ってるようです。そのあたりを、この戯曲・お芝居では登場人物みんなのセリフや立ち居振る舞いで面白おかしくそしていとおしく表現されてます。
      白水社に、そこの書籍で外国語を学ばれてたんですね。白水社は、演劇の戯曲本も出版されていて、演劇界で知名な岸田戯曲賞を主催されてもいます。語学書も戯曲本も、ともに言葉を得るってところでつながってますね。。。

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  3. サウス さん


    ほぉ…この物語は存じ上げないのですが、少し近未来を描いたSF小説? とそれを元にした舞台なのでしょうか。舞台になるのですから確固たる人気があるのでしょうね。

    私は映画やお芝居にはかなりうとく、結構有名な俳優/女優さんの事も知らなかったりするのですが、昔「チケットもらった! 」と誘われて新喜劇を観に行った時は素直に面白いものだなぁと感じました。久々に行ってみるのも良いかもしれません (^^)。

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    1. 335さんへ

      ジャンルにSF、そんなに遠くない未来、大阪新世界が舞台のお話です。小説とは異なる、戯曲(演劇の台本、せりふやト書きで構成)なんです。
      この戯曲、再上演されるくらい評価高いんです。劇団「ヨーロッパ企画」は人気があって、これまでの公演のなかには映画化されてる戯曲もあります。
      新喜劇、鑑賞されたことがあるんですね。関西で新喜劇といえば吉本それから松竹……どちらも演出に違いがあっても人情喜劇としての面白さは共通しています。
      関東だと下北沢が演劇の街っていわれてますよね、観る側、そして演じる側にとっても聖地。そこでのお芝居の鑑賞にお勧めです。。。

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