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19巻に登頂。「山と食欲と私」……

 

遅まきながら読み終えました、19巻。


「山と食欲と私」

2025年1月15日 初版 / 新潮社 / 660円+税


読後の感に少しだけ書き留めておこうかと。


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ポットラックパーティー

(料理や飲み物の持ち寄り会みたいな)の回、

小松原さんの長台詞にその勝手に親戚のおばちゃん目線も

よかったけれど、この台詞に心中での衝撃!なのを

ピックアップ。

ササっと仕上げられた「いわしの蒲焼のひつまぶし茶漬け」に

“ぬおお~~っ逆にすごい” !からの

“飾り気がなく手軽でありながらセンスのいい工夫が効いてる

一番カッコいいやつやん” !

っていうの。まぁビカーッてまぶしいくらいのお二人が

作った山ごはんだもの。


連載を追っかけてなくていつも単行本で読んでるんですけど、

掲載誌ではどうなんでしょう、

あの大学生の男子とはなにか進展があったり?

そこ今後のポイント。


スケッチを始めたきっかけに西さんの言葉にほんとそう、

描きたいなら描こうよ!っていうの、そこだけ抜き出しても

ほかのことにだって十分当てはまるそんな直球の言葉だから

とっても強いし、あと、全力で肯定してくれる人がいるのも

心強い。山ごはんとともにこれも楽しみとして、

この先自分の思うままに自由な絵が増えていくのかなと。

個展、十分にあり得そうですね。


記事取材の案件に、

幽霊が住むと噂の避難小屋に泊まって闇鍋やってみた、

っていう、その肝試しと山ごはんの合わせ技の回、

オチにほんともう((;゚Д゚ ))!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


19巻にどのお話も

(鷹桑&砂井先輩に川下りアクティビティものでしたね)

たのしくいただきました。


装丁の感触。「そぞろ各地探訪」……

 

いつものテイストに、

それが手で触れられる形でも味わえる、

みたいな一冊。


「そぞろ各地探訪 panpanya旅行記集成」 

1月と7月 発行 / 2700円+税 / 昨年末に予約し購入


旅(の思い出)が概ね下敷きになってる漫画と読み物の

収められてる一冊。


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この各地探訪の記に根差してるのは、

作者の特徴にすっかり親しいっていえる、考現学🔗。


旅先で見かける看板、飲食物の包装や容器のデザイン、

旅館で売られてるグッズ、トンネル通路の壁の落書き、

カニカマその商品の種類と個々の味の徹底調査、など、


また、

多くの人が当たり前すぎて関心に希薄だったり

それすらなかったり、そんな場所や状況などを

題材にしたりお話に盛り込んだりするところにもそうで、


「寒くせず初詣に向かえる方法はないものか」と、

そこで地下鉄の改札を抜けて神社の目の前まで

地下道が通じてるという聞き耳から、その新宿にある

花園神社を目指して、北風が当たらないばかりか

空調の効いてる場所さえある、地下で繋がる通路に

広い空間を、どこかスキャンするかのように、迷い歩く、


みたいな、軽い思いつきに端を発するようなことも、

だからどうでもよいとせずに拾い上げる、そんな視点を

大切にサルベージして見せてくれてる感じに

楽しくもあり、深遠。


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旅先に実在する場所を取り上げながら、そこへ

架空のことをさも本当のように入れ込んでくる描出に、

別の世界線を旅してるようで、


京都を訪れるところなんて、

三十三間堂の敷地内に現在「三十三重の塔」が

2026年頃完成予定で建設中、なんてことが描かれてて、

スカイツリーに対抗するそれを拝んでみたい気も。


同じ作者の単行本「足摺り水族館」には

第二京都タワーが登場するお話がありましたね、これ。

※「足摺り水族館」(2018年10月15日発行/1650円)


各地探訪の一編に、伝書鳩を怪我させてしまい、

その怪我の治療にどうしたものかと考える主人公たちの、 

鳩だから、と、伊東のハトヤホテルへ湯治を目的に訪れる

ってお話、同じように散策&宿泊の気分で和む~。

ただし伊東から帰ってきてその締めくくりに、

うひゃーそうきたー、って感じですけれど。


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そう、述べておかなきゃいけないことに、装丁。

本としてのありように、一般的なリズムを

外してるってところ。


過去に連載の作品だけを一冊にまとめるんじゃなくて、

これまでに自費で出版してたそれぞれサイズの異なる

冊子も一緒にまとめる、合本ってスタイル。


読んでて、

話が変わるタイミングでページのサイズも変わる、


紙質も変わって、

装丁による味変とでもいえばいいのかな、

妙味が増すっていうか。


この装丁に、

このお話の集まりだからそうあるべき形になった、

それ以外の形にあり得ない、って印象。


そこのところに、ふと、夏目漱石「夢十夜」の第六夜を

思い出したり。

運慶は鑿を使って仁王の眉や鼻を作ってるんじゃなくて、

木に埋まってる眉や鼻を掘り出してるんだ、っていうのを。


以前の記事「週刊本6  本本堂未刊行図書目録 🔗

装丁デザインの数々にも、眉や鼻を掘り出してるだけ、

って思いもしたり。


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そんなわけで、

夏目漱石「夢十夜」原作の映画「ユメ十夜」を

また観たくなった、

「そぞろ各地探訪」読後の感に幾分でした。


「へび女」……


新年おめでとうございます。


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楳図パーフェクション!1「へび女」

2005年9月1日 初版第一刷発行 / 小学館 / 1143円+税


三作品収録、すべて“へび女”のお話。

収録されてる順に読み進めていく、と、

最後の作品のラストが最初の作品へつながるそんな構成、

自らのしっぽをくわえた輪っか状のウロボロスを想起させる、

“永遠であり不滅”の恐怖、その円環。


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いつ読んでもこころ鮮やかに戦慄。


「おろち」「まことちゃん」「わたしは真悟」、……


ほかのタイトルにもそう、みなさんと同じように、

読み続けてきました……。


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まことちゃんの単行本、たとえばこの12巻に、

その表紙のおちゃめで、ポップでロックなこと!

かわいいですよね、まことちゃん。その、ある意味

“けがれのない無垢っぷり”にはなにかとあれですけど、

それはマコリンだけじゃない、お姉ちゃんも両親も

祖父母だってそう、常識なんて軽っと超えて、そこに

人を惹きつけてやまない怖いくらい強烈な刺激があって!

沢田家の一致団結したときなんてもう!日曜夕方6時台の

テレビアニメでお馴染み“国民的”として愛される家族像に

こちらだって!

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「奇蹟は 誰にでも 一度おきる

だが おきたことには 誰も気がつかない」

さとるとまりんを思い出すと涙が……。

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読み返すたび胸奥に浮揚する、

それが生そして死への向きにひとかたならぬ純粋ゆえの、

人間の表裏描写にその醜さが、哀情のほどが、

憎悪に満ちた輝きが、……。

それらが、美しい登場人物や黒く彩られた情景などに

極まり、読者に恐怖のかせを引きずらせる。


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ひとことで、偉大、な方。


「逢沢りく(上下巻)」に、……


遅ればせながら。猫村さんは実写の観てました。



上下巻ともに:2014年10月25日 第一刷発行/1000円+税


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以下感想に長々しくなく。ネタバレみたいなのご容赦


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十四歳のりくに清澄のほどを読みました。


その蛇口をひねるかっこうでなく心底からの、

ひざをつきこらえきれぬ胸から声を上げ滂沱とする最後に、

泣きました。


お話の肝に、親せきの幼い子“時ちゃん”とのかけ合いに、

そのときだけは普段とかわって自身を発してるりく。

双方いつわりのないかけ合いに、それはもうなくてはならない

“時間”で、だからその役割に踏まえられた上で“時男”って

名前がつけられたものと。


そもそも、

りくの父親が会社のアルバイトの女性と不倫してる(そのこと知ってる)、

母親も(りくを関西へやってから)過去つき合ってた男性と会う、

(本文に借りるなら)“大人として間違った”そんな両親と

同じ屋根の下で暮らしてるんだから、そこに思春期ってのも加味に、

感覚に鋭敏となってしまう、蛇口をちょっとひねるように

涙を流せてしまえるのもそうでしょう。


転校先(大おばさん家)に、その、

ぼけとツッコミの常日頃にそんな喋りようのまんべんない環境、

ってところに、作者が関西の方、嵯峨美(京都の美大)出てるから、

実際に親しくある土地柄を設定したものと、いえ、設定などと

ネームに構えずとも自然に必然にそうなったのに違いないものと。

そこに、もし引っ越し先が別の土地柄だったならお話の雰囲気に

どうなってたかなと、“時ちゃん”の存在はおそらく不可欠として、

その異なる線に思いのよぎったり。

転校先だけでなく“両親と住まう地”もひっくるめて、

そこんところの、土地柄を読む、という風趣の作品とも。


楽しくないし嫌いとする運動に片思いされてるそんなりくの、

足の速いところが軽妙なアクセントといった感で。


「マンガ宝島(S57.3.1 発行)」その2……

 











(その当時のマンガ界を見渡し、また未来をも思う)マンガ評論も。


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たしかにニューウェーブとあった時代の、

個々の粒子の結合その構造に豊饒の織りなされた、

見好くうつくしい結晶。


「マンガ宝島(S57.3.1 発行)」その1……


川崎ゆきおさんを知るきっかけに、この一冊でした。

いつ買ったのか忘れてしまったけれど、ずっと大切にしています。

(経年劣化という物理現象にはどうあがいてもかないませんけど……)


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「マンガ宝島(S57.3.1 発行)/ 480円」

古書として現在の価格にわかりません、

でもそんな高くない気も……







メインの表紙にあります、

ニューウェーブからネオ・ロマンティックスへ、と。

そこに集った執筆陣の並びに豪華で、もうすでに、伝説。

(あと高野文子さん蛭子能収さんのお名前があったなら……とも)


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収められた作品の表紙に幾つかを。



















その2へつづく……


怪奇ロマン派“川崎ゆきお”さん ……

 

川崎ゆきおさんに、

猟奇王、それから、怪人二十面相、忍者、くのいち、怪傑、探偵、など、

その生み出されたキャラクターたち。



見てるだけで川崎ゆきおさんの世界にスロンと溶け入るような表紙の単行本に、

「エディプスの怪人」「二十面相の風景」「活劇少女探偵」。


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舞台美術のような背景に好感、

演劇を鑑賞しているみたいで。

(←「夢伝説」)







網模様や格子模様などといったコマ背景も、

こちらに幻惑を催させるふうで、お話にも

相性よくて、独特のおぼえに好感。

(←「夢伝説」)







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とりわけ猟奇王が主人公のお話には、

怪人、怪傑にとって宿命“ロマン”に走ること……

そこのところに生きづらい現実と重なるおぼえから

センチメンタルの呼び起こされるふうもあって。


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「小説 猟奇王」川崎ゆきお

1998年 4月7日 初版第一刷発行


大阪から東京へ、東京猟奇軍団アジトへ遊びにやってきた猟奇王(と忍者)。

自らの存在性の見出しにくくなった現実社会に、ある女子大生との

出会いからその身が社会に縛られない自然体であることを感取、

怪人として行動に出る、走る。といったお話。









本文中の挿絵が良いんです。



コーヒーにミルクをいれるときの音
(赤瀬川原平さんも文章に書かれて
 いますね、この音のことを)

猟奇王と怪傑紅ガラス

猟奇王と山岸佳菜さん

猟奇王に買ってもらった豹柄の
黄色いマフラーを巻いた佳菜さん、
そして、
銀座宝石店美笑堂から宝石を奪取し
アドバルーンで逃げ去るところの
猟奇王と忍者のシルエット





アドバルーンが銀座を去っていくなか、

地上に野次馬一人ひとりが一つにまとまり群衆となって猟奇王を、

その宿命“ロマン”を追いかけてるそんな眺めが、

普段“ロマン”なんて意識もしない群衆にすべてのときめきにも感じられて。


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この今の時代からさらに先へとロマンに走って頂きたかったのですけれど、

その思いで、これからも作品のページをめくることでしょう……。


自分自身のありどころ……


こちらのブログにお越し頂いているみなさんへ

暑中お見舞い申し上げます


関西も梅雨が明けました、猛暑酷暑に無茶しない範囲にもちろんで、

肌身に夏の吸収を。


   〇   〇   〇


これ読んでみました。


「ここは鴨川ゲーム製作所」

1巻:2022年10月31日 初版第1刷発行 / 792円税込み

2巻:2024年3月2日 初版第1刷発行 / 990円税込み


ストーリーにざっくり……


ゲームを作りたい、っていう主人公(の一人・ヨウ)の衝動から始まり、

その制作に集まった、こんなことがなければ繋がらなかったメンバーたち。


ゲーム制作にそうはうまくいかない、けど、だんだんよくなっていく、

そう日月の流れていくなかで、メンバーに一人ひとりの決してゲームではない

人生に、個々にたがえる事情から抱える心模様などがあって……

でもそれぞれに立ち止まることなく、やがてゲームの方もどうにか形となり

待望のリリースを迎え……。


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この作品を描くのに参考とされた書籍や映画のリストが2巻末に載ってて、

それら参考文献のタイトルのなかに見られることば「ADHD」「発達障害」

「LGBT」「ハラスメント」、といった、日常からの理解にまだへだたりの

見えてならないそれらが、話に、登場人物の設定にあって、

絵柄に軽くあるんですけどそのぶん深く染み入ってくる触りで、

読者の感情移入その度合にも色濃いものと。


ゲームがリリースされて登場人物たちは顔を合わせるのに遠のくけど、

関係に切れることなく久しぶりに一同集まるシーンなんて、読んでる方も

ほっとする気分。親しい仲との再会に近況報告なんかほんとそうで、

なくてはならないシーン。


生きていくのにたやすくいかない、そんな現実に否応なく続くけど

そこへ救いを伸べてくれてる、って印象もする漫画。


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タイトルに略すと「ここ鴨」、ぜんぶひらがなにすると「ここかも」。

絶対にそこ、って感じじゃなくても、そんなふうな場所がある、って

思えるだけでも人は心強い。それは、実際の場所であっても、

目には見えない場所によりどころであっても。


そういえば、ブログに昨年末の、

奈良美智さんの個展にその図録タイトルに「ここから」でしたけど、

「ここかも」とも通じてるものがあるような気が……。