その前に、
今年1月に紹介した「TRY48」、現時点(新潮六月号)までの展開を……
主人公・百合子がTRY48の悪魔セブンの一人としてアイドルデビュー。
寺山修司の指示のもと、週刊プレイボーイの巻頭カラーデビューで
ほかのメンバー全員とともに真っ裸にさせられ広いのっぱらを走らされたり
(そこを鋤田正義や荒木経惟など有名カメラマンらが撮影!)、
勝手に人ん家に上がり込んでアイドルする、といった
“勝手にアイドル宅配、ならぬ誤配!”なんてやらされたり。
これから先どうなるのか、TRY48が世間の話題となり、
おっきなステージで大観衆の前で弾ける展開となるのでしょうか、
引き続き楽しみです。
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「TRY48」のプロデューサーなのはあくまでも物語上の、
現実世界の寺山修司について、そのジャンルの広い創作に、
劇場用映画や実験映像といったものがあります。その一本に
「トマトケチャップ皇帝」って実験映像があるのですけど、
内容はさて置き、付されたタイトル。
それと親近感おぼえるタイトルの漫画があったなって、
ということで、ご紹介です。
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「マヨネーズ姫」松井雪子
1996年 10月31日 初版 / 1000円(税込み)
この単行本には、1話ずつ読み切りで13話収録。
描きおろしを除いて、すべてが
月刊ガロ(1994~1996)に掲載されていました。
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“小学生のはっちゃん(←マヨ吸ってる子)”を
主人公に(そうじゃない話もありますが)、
その世界に生きる他のキャラクター含めて
それらの個性的な妙を味わう、そんな漫画。
※ はっちゃんはマヨネーズ好き。
1日に10本は吸います!
~ ~ ~
以下のようなキャラクターが登場し、
全体的にエキセントリックな話が編まれていきます。
道の水たまりやプールにはった
氷など、町にはる氷を食べるのが
大好きな「こおりひめ」。
死期迫るお姉さんとの約束通り、
亡くなったお姉さんの体を
食べたことで、そのお姉さんが
自身の細胞にかけた呪い(この世に
生き続けたいとする“再生の呪い”)に
かかってしまう弟。
デパートの中で神隠しに遭い、
そこで暮らし続けている女の子。
デパートが建つ前の“神隠しの森”で
神隠しに遭い、そのままデパートで
暮らし続けている80歳の老婆。
大食いの見世物で稼いでいる、
肉体が食欲に飼われているような、
大食らいの女性。
※
大食いの見世物の仲間に誘われ、
マヨネーズ大食い少女として
デビューするはっちゃん。
自宅に自分ひとりだけの安らげる
空間を欲する、常に鬱屈を抱えて
破壊&殺人の妄想に駆られる主婦。
陽があるときや月が明るいときは
スポーツバッグの中に隠れてやり
過ごす、“影”がない男のコ。
死んでも生き還ってしまう、
そのことに罪を抱いている姉妹。
おじいさんの残した
タイムマシーンの設計図を受け継ぎ、
それをひとりこつこつと作っている
おばあさん。
意味もないのに形を変え、
恥もないのに赤く染まり、
知恵もないのに涙を流す、そんな
ほかの雲のように生きることを
やめようと考える、この世で
たったひとつだけ生きている
(自立してる、っていえる)雲。
~ ~ ~
メインキャラクターのはっちゃんも、
その趣向や行動などに相当トリッキーな女のコ。
たとえば……
峠のばばあに喰われないよう
からだにからしを塗りまくったり、
突然亡くなってしまったお母さんを
生き還らせようと、その遺体を背負い、
目的の医者がいる屋敷を探して
富士の青木ヶ原をさまよったり、
5段のマヨネーズケーキを作ったり、
ほかにもトリッキーな面が描かれてます。
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エキセントリックな感から、
大人のための “彩りに奇色のメルヘン”、そういえるような
「マヨネーズ姫」。
古書店などで入手可能だと思いますので、
よろしければお手にどうぞ。
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なお、この作者は小説も発表されていて
(単行本に「イエロー」「刺繍天国」など)、
「マヨネーズ姫」のような味わいが頂けます。
そちらもよろしければ古書店などで。ただ、
古書価格としてけっこうな高値がついてるようです……。
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真夏日にすっかり突入。
熱中症対策に、水分補給とともに
周囲を見計らいマスク外して呼吸を整えましょう。