怪奇ロマン派 “川崎ゆきお” さん ……


川崎ゆきおさんの作品に思い出す、

猟奇王、それから、怪人二十面相、忍者、くのいち、怪傑、探偵、など、

その生み出されたキャラクターたち。





見てるだけで川崎ゆきおさんの世界にスロンと溶け入るような、

そんな表紙の単行本に、

「エディプスの怪人」「二十面相の風景」「活劇少女探偵」。


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舞台美術のような背景に好感、演劇を鑑賞しているみたいで。

(「夢伝説」)


網模様や格子模様などといったコマ背景も、

こちらに幻惑を催させるふうで、お話にも相性よくて、

独特のおぼえに好感。(「夢伝説」)


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とりわけ猟奇王が主人公のお話には、

怪人、怪傑にとっての宿命 “ロマンに走ること”

そこのところに生きづらい現実と重なるおぼえから

センチメンタルの呼び起こされるふうでもあって。


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「小説 猟奇王」川崎ゆきお

1998年 4月7日 初版第一刷発行


大阪から東京へ、東京猟奇軍団アジトへ遊びにやってきた

猟奇王(と忍者)。

自らの存在性の見出しにくくなった現実社会に、

ある女子大生との出会いから、

その身が社会に縛られない自然体であることを感取し、

怪人として行動に出る、走る。

といったお話。


(カバーの裏側)


本文中の挿絵が良いんです。


コーヒーにミルクをいれるときの音「スロン」
(赤瀬川原平さんもこの効果音について文章で書かれてますね)


猟奇王と怪傑紅ガラス


猟奇王と山岸佳菜さん


猟奇王に買ってもらった豹柄の黄色いマフラーを巻いた佳菜さん、
そして、銀座宝石店美笑堂から宝石を奪取し
アドバルーンで逃げ去るところの猟奇王と忍者のシルエット


アドバルーンが銀座を去っていくなか、

地上に野次馬の一人ひとりがまとまり群衆となって猟奇王を、

その宿命 “ロマン” を追いかけてるそんな眺めが、

普段 “ロマン” なんて意識もしない群衆にとっての

「ときめき」にも感じられて。


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この今の時代からさらに先へと

ロマンに走って頂きたかったのですけれど、

その思いで、

これからも作品のページをめくることでしょう……。


4 件のコメント:

  1. サウス さん


    こんばんは、335です。川崎さん…明確に覚えている訳ではないのですが、なんかこの絵柄見覚えがあるような気がしました。

    私、昔から推理物とかが好きで…その関連かな? 小説ではありますが挿絵が漫画タッチなんですかね。う~、ハッキリと思い出せない… ^^;)。

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    1. 335さんへ

      川崎さんの絵柄には、たとえば作家江戸川乱歩の創作した怪人や探偵が活躍していたずいぶん昔のころの雰囲気を、それを実際知らなくても感じさせる趣、懐かし味もあって、だから、どこかで見たことがあるような、ってなるのにわかる気がします。実際にはどなたかの小説の挿絵はなさそうですけれど(表紙絵ならあって)、そのような絵も多く描いてほしかったものと、本当に悔やまれます……。

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  2. 私も、どこか懐かしさを感じるような絵柄だと思いました。
    漫画の絵柄って、その時代の雰囲気や流行も反映されているものなんですね。
    今の時代、いくらでも美男美女に描けるのでしょうが、その分、川崎さんのような個性や味は感じられにくくなっているような気がします。

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    1. コウジ菌さんへ

      川崎さんの絵柄やその雰囲気は、本格的に活躍され始めた1970年代から大胆には変わることなくて、それに明治大正昭和といった頃のロマン漂わせる風趣にも大きく変わることなくて、なので、本当その通りで、そのような漫画を創作されていた川崎さんの存在は今の時代にとても重要だったのですけど……そういった漫画家さんが数少なになっていくのは悲しく寂しい限りです……。

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