前回の記事からの ~ 映画「ユメ十夜」第六夜……


前回、夏目漱石「夢十夜」原作の映画を思い出し、

もしかしたら、とYouTubeに検索かけてみたら

“第六夜”が上がってました。


映画「ユメ十夜(2007年公開)」🔗 から第六夜、

松尾スズキさんアレンジ(10分)。



本編に、各夜異なる色合いにユニークで(予告編🔗)、

主題歌(山田タマルさん「手」🔗)に

十の幻影が明けるいい締めくくり。


装丁の感触。「そぞろ各地探訪」……

 

いつものテイストに、

それが手で触れられる形でも味わえる、

みたいな一冊。


「そぞろ各地探訪 panpanya旅行記集成」 

1月と7月 発行 / 2700円+税 / 昨年末に予約し購入


旅(の思い出)が概ね下敷きになってる漫画と読み物の

収められてる一冊。


   /    /    /


この各地探訪の記に根差してるのは、

作者の特徴にすっかり親しいっていえる、考現学🔗。


旅先で見かける看板、飲食物の包装や容器のデザイン、

旅館で売られてるグッズ、トンネル通路の壁の落書き、

カニカマその商品の種類と個々の味の徹底調査、など、


また、

多くの人が当たり前すぎて関心に希薄だったり

それすらなかったり、そんな場所や状況などを

題材にしたりお話に盛り込んだりするところにもそうで、


「寒くせず初詣に向かえる方法はないものか」と、

そこで地下鉄の改札を抜けて神社の目の前まで

地下道が通じてるという聞き耳から、その新宿にある

花園神社を目指して、北風が当たらないばかりか

空調の効いてる場所さえある、地下で繋がる通路に

広い空間を、どこかスキャンするかのように、迷い歩く、


みたいな、軽い思いつきに端を発するようなことも、

だからどうでもよいとせずに拾い上げる、そんな視点を

大切にサルベージして見せてくれてる感じに

楽しくもあり、深遠。


   /    /    /


旅先に実在する場所を取り上げながら、そこへ

架空のことをさも本当のように入れ込んでくる描出に、

別の世界線を旅してるようで、


京都を訪れるところなんて、

三十三間堂の敷地内に現在「三十三重の塔」が

2026年頃完成予定で建設中、なんてことが描かれてて、

スカイツリーに対抗するそれを拝んでみたい気も。


同じ作者の単行本「足摺り水族館」には

第二京都タワーが登場するお話がありましたね、これ。

※「足摺り水族館」(2018年10月15日発行/1650円)


各地探訪の一編に、伝書鳩を怪我させてしまい、

その怪我の治療にどうしたものかと考える主人公たちの、 

鳩だから、と、伊東のハトヤホテルへ湯治を目的に訪れる

ってお話、同じように散策&宿泊の気分で和む~。

ただし伊東から帰ってきてその締めくくりに、

うひゃーそうきたー、って感じですけれど。


   /    /    /


そう、述べておかなきゃいけないことに、装丁。

本としてのありように、一般的なリズムを

外してるってところ。


過去に連載の作品だけを一冊にまとめるんじゃなくて、

これまでに自費で出版してたそれぞれサイズの異なる

冊子も一緒にまとめる、合本ってスタイル。


読んでて、

話が変わるタイミングでページのサイズも変わる、


紙質も変わって、

装丁による味変とでもいえばいいのかな、

妙味が増すっていうか。


この装丁に、

このお話の集まりだからそうあるべき形になった、

それ以外の形にあり得ない、って印象。


そこのところに、ふと、夏目漱石「夢十夜」の第六夜を

思い出したり。

運慶は鑿を使って仁王の眉や鼻を作ってるんじゃなくて、

木に埋まってる眉や鼻を掘り出してるんだ、っていうのを。


以前の記事「週刊本6  本本堂未刊行図書目録 🔗

装丁デザインの数々にも、眉や鼻を掘り出してるだけ、

って思いもしたり。


   /    /    /


そんなわけで、

夏目漱石「夢十夜」原作の映画「ユメ十夜」を

また観たくなった、

「そぞろ各地探訪」読後の感に幾分でした。