現代美術家が描いた漫画 その2「趣都」……


「趣都」

2025年 9月22日 第1刷発行 / 講談社 / 1980円(税込)


一言で、大好物。

ほんと楽し過ぎて、没入。

日頃しごとの忙しさにきぶんわる過ぎに、すごく癒し。


カバーを外した状態、その表と裏に、


“連載開始前スケッチ” がデザインされてます。


   *   *   *


都市(万人の日々の営み)を形成しその役割にあるもの・

意匠について、そのお話に大きくわけて三つの材に

“電柱” “日本橋・首都高” “階段” をピックアップ、

それぞれに見目だけでなく目には見えないデザイン性、

存在性を高尚に昇華させる、芸大の専門講義そのような

リズムにあって、ページをめくりめくりして見てるだけでも

それはそれはもううっとりな、作品。


動画に落とし込まれた「第一回」があったので。

(途中と終わりに漫画アプリの宣伝入ってます)



漫画なのですけど、表現形態にそうあるだけで、

だからそれは、一次的に、としておいて、味わうほどに

作者つまり画家山口さんのこれまで発表されてきた作品の

ありようと並行にある、っておぼえで、

その代表的な描出に緻密なコマなんて、魅入ります。


   *   *   *


これは個人的になんですけど書き留めておくと、

LIXIL出版(2021年で活動終了)から発行されてた

“🔗10+1” という書籍に、その主線だった

建築・都市工学にその論や批評に硬派な感だった内容を、

登場人物がやさしい砕きようでわかりみに導いてくれる、

そんな雰囲気にもあるかなって。


ともあれ、

普段見慣れた景観にあらためていとおしくなる、

そこへの関心、一通りではない捉え方をはぐくんでくれる、

手に取ってごらんあれ、とおすすめできる一冊。


現代美術家が描いた漫画 その1「ミュータント花子」……


「ミュータント花子」

1999年 8月15日 初版第1刷発行 / ABC出版 / 1200円+税


1997年私家版の、復刻版。

発行日に意図的なんでしょうね。


フランス版もあって、そちらはオールカラー。


裏表紙に……


以下に、あとがきからの抜粋。


……(「戦争画 RETURNS」について)

~そんな平和ボケの世代でも、平和ボケの代表として意識的に

過去の戦争を描けば、なにがしかの特殊な意義が生じるはずだと……


……(この漫画について)

~という目的の「戦争画 RETURNS」シリーズに、是非とも

組み込むべきだと思いました。そこには<戦争にすっかり

リアリティーを失っている>という世代的なリアリティーが、

捩れた形で深く刻印されているように思えたからです……


   *   *   *


このお話に、ざっとするなら、

天皇陛下から、同士純一と力を合わせて悪魔の国

アメリカを倒すのだ、と命を受けた主人公・花子が、

マッカーサーや敵兵からの極ひど仕打ちを受ける展開が

あってあってあって、からの、やがてそのときを迎えて

ミュータント花子として生まれ変わり、

勅命を果たす、といったぐあい。


極ひど仕打ち(花子だけじゃなくてその姉や純一にも)

そこの描写・表現にR指定の度に過過過激激激っていえる、

それはもう会田さんの本能に欲望にめいっぱい。


そんなあたりに、ほかのサイト(古書店など)で

こんな感じですよっていうの、見かけません。

シーンに同じようなページの紹介が多くって、

そうでしょうね。


会田さんの作品(に通底するところ)をご存じの方なら

ほかのページに、あとがきにもあるその深く刻印されてる

捩れた形にどんなふうか想像に容易のことと……


生(命)、性、戦争、を材として、

漫画という枠にあって道徳倫理の枠を大いにはたいてる表現に、

絵の感じや描いているものなど目にしてると、ふと

似てる感じあるかも、って、漫画家・根本敬さんの作品を、

そのアクの強さや猥雑さ、グロテスクさを思い出したり。


根本敬さんといえば、その方の有名な言葉に

「でも、やるんだよ!」があって、意味合いに、

自分の未来にどうなったとしてもなすべきことにひたむきとする、

なのですけど、それをこの漫画にもおぼえる、

そんな一冊に、猛烈って印象。