今年の下鴨納涼古本まつり。「十一人の少年」「文藝評論」……


8月のお盆期間、京都・下鴨神社の糺の森で行われた

「第38回・下鴨納涼古本まつり」(8/11~8/16)

その私的記録。


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初日は雨で中止、それ以降最終日まで連日の開催。


一日だけだったのですけど予定を組んで行ってきました。

ほかの日もそうだったようで、ほんと人でいっぱい。

外国からの観光客に多くなりましたね。


古本もしくは古書との出会いに、はたまた “まつり”

その響きに引き寄せられて、お目当てにあるなし関係なく、

熱心に、黙々と、楽しく和やかに、

そう人それぞれになにかしら探し求める姿にいつまでも尊い、

そんな糺の森に書籍の森羅、万有の中をゆっくり巡りました。


そういえば、どこの古本屋さんだったかな、

かなり高齢とおぼしき老男のお客が、その

SF特撮映画の専門雑誌を熱心に立ち読みされていた姿が

記憶に残ってて……

愛好するものに迷いのない、逞しい印象でした。


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古本まつりで買った本に……


「十一人の少年」

1983年8月10日発行 / 白水社 / 定価980円


表紙、ページにヤケやシミがあるけど、

読むのに問題ありません。その分だけ安価でした。

コンディションよければ定価の十倍以上の値をつける

古本屋さんもあるくらいだから、入手にそれだけで嬉しい。


「十一人の少年」は、劇作家に北村想さんの岸田賞作品で、

ミヒャエル・エンデ「モモ」に着想を得た戯曲。

「モモ」に “時間” それではなくて “想像力” が奪われ

そして取り戻すそんなお話。この戯曲の登場人物に

(少女)の名前が「スモモ」ってそれだけでもうなんだか

惹きつけられてしまう。続編もあって、

読まなきゃって思ってたので、積ん読にならないようにしないと。


もう一冊に、


「文藝評論」

1949年 6月10日 再版発行 / 日産書房 / 定価250円


函はなくて、本のみ。

発行から76年も経ってるわけだし、損傷、ヤケやシミに

それはもう見ての通り、なのでとっても安価でした。

丁寧な扱いを心がけたなら、読むのに支障ありません。

続巻があるのですけど、それは探し切れず……。


小林秀雄さんは、戦前戦後に活躍された文芸評論家。

その評論は理の壁に高くて厚いっておぼえにあるけど、

随想そういった文章には洒脱な纏いが感じられて、

わたしは好みです。旧字体の文章に、新字体ばかり

触れてる毎日だから、たまには楽しい。

横光利一(の「機械」)についての篇があるので、

「機械」を再読し、読んでみようと思います。


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これは、あとで調べてわかったこと。


買った「文藝評論」、実はそれが「十一人の少年」と

同じ出版社 “白水社(今年で創業110周年)” から

発行されてたのが年月を経て別の出版社 “日産書房” に

引き継がれ再発されたもの。


手もとにやってきた二冊にそんな繋がりがあったなんて、

ちょっと運命めいた感に、嬉しかった。


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次は秋、百万遍知恩寺境内での古本まつり。

元気に足を運べますように。


そのとき夏を思い出せるように……


今年も巡ってくる寒い季節への備えに。


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京都、8月のお盆期間。最高気温35、36度……


賀茂御祖神社(下鴨神社)


古本屋さん古書店さんの出張即売テントにずらり(見えてる
範囲から更に先の方までずっと)並んでる、糺の森に
“下鴨納涼古本まつり”


飛び石あたりにいつもながら賑わってた、鴨川デルタの眺め


YMOに関連したお仕事もされてます。「作り方を作る」……

 

横浜美術館で開催中(6/28~11/3、2025)の展覧会、

「佐藤雅彦展 新しい ×(作り方+わかり方)」


足を運ぶのにすんなりいきませんので、

図録だけです


「作り方を作る」佐藤雅彦展 公式図録

2025年6月30日 第1刷発行 / 左右社 / 2970円(税込み)


手がけられたものにこれを見ればきっと瞭然、

そんなワードがデザインされた表&裏表紙。


図録ですけれど、その冒頭でも述べられてるとおり、

展示に個々の紹介っていう構成じゃなくて、主に、

それらを作るに至ったいきさつや、具現するための方法、

ルール、トーン(世界観)、ものの見方、といった、

このお方の思考のありようがつづられてる、そんな具合。


もちろん展示されてる作品(インスタレーション、映像、

出版物、販促物、など)のリストも載ってます。


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個人的に、

図録の表紙に一番大きな文字で目立ってるそれよりも、

広告業界で名を馳せたお方って印象に強くて。

その手がけられた広告(テレビCM)に幾つかを……


<湖池屋/コイケヤ・ジャガッツ「主婦と犯人」1988>


<湖池屋/コイケヤ・スコーン「スコーンダンス」1988>


<NEC/バザールでござーる「寄り道はいけないでござーる」1991>


<サントリー/紅茶「PEKOE」1993>


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そして、これですよね。



どのピタゴラ装置にもそうで、

ビー玉が装置のセグメント・ギミックに一つひとつの工程を

転がっていく様子にいとおしい、そんな一連に紡がれていく

ビー玉の物語を観てるだけで脳内活性される、

そんな学知に純粋無垢な面白さ。


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この図録を読んでたら、広告業界までの内容が

こちらの書籍と重なってるのに気づいて、でも

絶版ぽいからそのあたりを図録がカバーしてるのかも。


「広告批評の別冊8 佐藤雅彦全仕事」

1996年6月1日 第一刷発行 / マドラ出版 / 2900円(税込み)


広告(CFやグラフィックなど)、

雑誌類に掲載されたエディトリアルもの、ほか、

今回ご紹介の図録にそれ以上の数、種類の図版が載ってます。


注目に、

あのフジカセットYMOキャンペーンのプレミアムで制作された

テクノバッジ「ピテカントロプス・エレクトゥス・トキオヌス」が

図版に小さいながらも紹介あって、嬉しい。


それが展覧会で見られるのって良いですね、

古いものだし飾られるだけかな、

動作に光ってくれてたりしたら嬉しいな、と。


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ということで、

このお方に、また手がけられたものに興味関心を

お持ちでしたら、いい図録です。


最新号に無事刊行で一安心。「ワンダーJAPON」11号……

 

暑中お見舞い申し上げます


連日の暑さに日本全国ほんと酷烈ですけれど、

心身に気をつけてまいりましょう


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「ワンダーJAPON」11号

2025年7月31日発売 / 1650円(税込み)


特集エリアは大分県と宮崎県。

ダム、発電所、遺構、神社、ミュージアム、町並み、ほか、

紹介される異空間にいつもどおりのクオリティ。


ついに完成迎える『蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)』

その記事もあって、いよいよ新たな異空間の扉が

完全に開かれるときがきた、って感じで嬉しい。

美学校の講座レポートより~このような建築!


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Googleマップでも見ることができる、

今号で記事になってるスポットに……


その1

別府タワー〔大分県別府市〕

泰然としたタワーを離れたところから眺めるのは

山にそうするのと同じ感で、名山といった味わい。

ストリートビューの画面を右へスライドさせるとバス停に

「別府タワー前」が確認できます。


その2

グローバルタワー〔大分県別府市〕


展望塔です。水戸芸術館のタワーと同じ磯崎新設計。

魅入ります、この異彩感に。


その3

日南市文化センター〔宮崎県日南市〕

丹下健三設計です。時代を超える、この存在感。SF風味!


その4

ケロケロ共和国〔宮崎県小林市〕

総合レジャーランドの入口にある、そのシンボル。

大きいカエルはレジャーランドのマスコット「Uターンカエル」。

“ケロケロ”その言葉には、若者や町民の定住促進、町外在住者の

早期Uターンで町が更に活性化・栄えるように、との願いの

込められた「帰ろ帰ろ」の意があるそう。


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『次号は初春!?』との予告に刊行は大丈夫そう、

そんな「ワンダーJAPON」最新号に毎度のご紹介でした。


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お盆休みを迎えられるみなさま、

日々背負ってる重い荷を下ろしてリフレッシュ……。