いつも通り癒しの旅行マガジン。「ワンダーJAPON」……


刊行に無事継続で一安心の、最新号。


「ワンダーJAPON」10号

2025年1月29日発売 / 1650円(税込み)


特集エリアに、新潟県と長野県。

ダム、発電所、遺構、神社、ミュージアム、町並み、

ほかにも、まだまだ異空間の扉が開かれてますね。


表紙の大仏様の座像(長野県長野市)に、個人が、

廃材を彫っては寄せ合わせて、4年かけて作り上げたのだそう。

高さ5メートル超え。制作の時期にコロナ禍で、

「人々を救いたい」その思いと、「作っていて楽しいから」

っていう一番の動機でこのように彫像が。


   /    /    /


Googleストリートビュー撮影車のカメラも捉えてる、

今号の記事から個人的にピックアップのスポット。

(Googleマップで見る、をクリックしてブラウザの

 サイズでご覧になると臨場感少し上がるかも)


その1

小千谷(おぢや)地下道〔新潟県・小千谷市〕

その出入口の意匠に鯉。口や尾っぽから出入り。

視点をぐるり移動させると全部で3匹!いるのがわかります。


その2

狂気・異端と称された建築家による、斜めの家〔新潟県・上越市〕

階段を用いない代わりになだらかな折り返しスロープで

いたわりある二階建て住居。設計を手がけたのは建築家“渡邊洋治”。

建築家ル・コルビュジェの弟子に師事された方(孫弟子ですね)。

クラファンで保存・活用のための修繕が行われたようです。


その3

斜めの家と同じ建築家による、善導寺〔新潟県・糸魚川市〕

お寺です、外観にとてもダイナミックで、モダン。斜めの家も

そうなんですけれど、エッジが効いててかっこよくて、

SFって感じが(* ̄▽ ̄)ゞ♪


前回の記事からの ~ 映画「ユメ十夜」第六夜……


前回、夏目漱石「夢十夜」原作の映画を思い出し、

もしかしたら、とYouTubeに検索かけてみたら

“第六夜”が上がってました。


映画「ユメ十夜(2007年公開)」🔗 から第六夜、

松尾スズキさんアレンジ(10分)。



本編に、各夜異なる色合いにユニークで(予告編🔗)、

主題歌(山田タマルさん「手」🔗)に

十の幻影が明けるいい締めくくり。


装丁の感触。「そぞろ各地探訪」……

 

いつものテイストに、

それが手で触れられる形でも味わえる、

みたいな一冊。


「そぞろ各地探訪 panpanya旅行記集成」 

1月と7月 発行 / 2700円+税 / 昨年末に予約し購入


旅(の思い出)が概ね下敷きになってる漫画と読み物の

収められてる一冊。


   /    /    /


この各地探訪の記に根差してるのは、

作者の特徴にすっかり親しいっていえる、考現学🔗。


旅先で見かける看板、飲食物の包装や容器のデザイン、

旅館で売られてるグッズ、トンネル通路の壁の落書き、

カニカマその商品の種類と個々の味の徹底調査、など、


また、

多くの人が当たり前すぎて関心に希薄だったり

それすらなかったり、そんな場所や状況などを

題材にしたりお話に盛り込んだりするところにもそうで、


「寒くせず初詣に向かえる方法はないものか」と、

そこで地下鉄の改札を抜けて神社の目の前まで

地下道が通じてるという聞き耳から、その新宿にある

花園神社を目指して、北風が当たらないばかりか

空調の効いてる場所さえある、地下で繋がる通路に

広い空間を、どこかスキャンするかのように、迷い歩く、


みたいな、軽い思いつきに端を発するようなことも、

だからどうでもよいとせずに拾い上げる、そんな視点を

大切にサルベージして見せてくれてる感じに

楽しくもあり、深遠。


   /    /    /


旅先に実在する場所を取り上げながら、そこへ

架空のことをさも本当のように入れ込んでくる描出に、

別の世界線を旅してるようで、


京都を訪れるところなんて、

三十三間堂の敷地内に現在「三十三重の塔」が

2026年頃完成予定で建設中、なんてことが描かれてて、

スカイツリーに対抗するそれを拝んでみたい気も。


同じ作者の単行本「足摺り水族館」には

第二京都タワーが登場するお話がありましたね、これ。

※「足摺り水族館」(2018年10月15日発行/1650円)


各地探訪の一編に、伝書鳩を怪我させてしまい、

その怪我の治療にどうしたものかと考える主人公たちの、 

鳩だから、と、伊東のハトヤホテルへ湯治を目的に訪れる

ってお話、同じように散策&宿泊の気分で和む~。

ただし伊東から帰ってきてその締めくくりに、

うひゃーそうきたー、って感じですけれど。


   /    /    /


そう、述べておかなきゃいけないことに、装丁。

本としてのありように、一般的なリズムを

外してるってところ。


過去に連載の作品だけを一冊にまとめるんじゃなくて、

これまでに自費で出版してたそれぞれサイズの異なる

冊子も一緒にまとめる、合本ってスタイル。


読んでて、

話が変わるタイミングでページのサイズも変わる、


紙質も変わって、

装丁による味変とでもいえばいいのかな、

妙味が増すっていうか。


この装丁に、

このお話の集まりだからそうあるべき形になった、

それ以外の形にあり得ない、って印象。


そこのところに、ふと、夏目漱石「夢十夜」の第六夜を

思い出したり。

運慶は鑿を使って仁王の眉や鼻を作ってるんじゃなくて、

木に埋まってる眉や鼻を掘り出してるんだ、っていうのを。


以前の記事「週刊本6  本本堂未刊行図書目録 🔗

装丁デザインの数々にも、眉や鼻を掘り出してるだけ、

って思いもしたり。


   /    /    /


そんなわけで、

夏目漱石「夢十夜」原作の映画「ユメ十夜」を

また観たくなった、

「そぞろ各地探訪」読後の感に幾分でした。


「来てけつかるべき新世界」……


おおさか通天閣望む新世界エリアにそこのところの

わちゃわちゃがやがやにぎにぎしい日常と先端デジタル

テクノロジーとの混合に、それが新喜劇なスタイルへと

evolutionを遂げた、っていいたい、 

そんな戯曲の収められた一冊。


「来てけつかるべき新世界」

2017年5月10日 発行 / 白水社 / 2000円+税


京都に拠点の劇団「ヨーロッパ企画」の、

2016年・第35回公演(初演)、それから

2024年・第43回公演で再上演された、五話構成の戯曲。


   ~ ~ ~


近未来、おおさかは浪速区恵美須の新世界、

そこにある串カツ屋を切り盛りする本来店主の父親

(わけあってこもり中)の代わりに働くひとり娘の

マナツを軸に、まわりにいるむさくるしくもいとおしい

おっちゃんやら歌姫とか、そんな皆がデジタルテクノロジー・

デジタルガジェットにあれこれとはしゃぎほんろうもされつつ、

最後に訪れるシンギュラリティっていえる情景にほろりとくる、

SF人情喜劇。


   ~ ~ ~


ハイウェイが整備されて出前に宅配それに空撮や宣伝

そのほか飛んでるのに色々なドローン、レーザービーム

備えた警備ロボット、AI、VR、人工知能付きゴーグル、

ネットワークと繋がり串カツ揚げるロボットアーム、など、

それら登場する先端テクノロジーと登場人物たちとの

親和性がおかしみたっぷりに描かれてて、また、関西では

お馴染み新喜劇な感触で鋭く切り込んでる印象もあって、


マナツに好意を持ち串カツ買うのに東京から

おおさか新世界までドローン飛ばしてくるテクノさん、

いまや処理能力に高くて当たり前のCPU搭載の炊飯器

(ゴミ置き場に捨ててあったやつ)に将棋プログラム入れて

それと勝負し敗れてしまうイシダさん、

その炊飯器(電光掲示板を介してしゃべる)と

お笑いコンビを組むことになる芸人のキンジ、

飛田遊郭のりんねちゃんに実はVRのそれと気づかず

恋い慕うホンダさん、

などなど、


近未来のお話っていっても、登場人物一人ひとりの人間味に

01言語のテクノロジー味に染まってなくて

二度漬け禁止のソース味にあって、

そこのところにここちいい戯曲。何度読んでも愉しい一冊。


   ~ ~ ~


再上演、観に行きました。
(2024年9月、京都府立文化芸術会館)


初演時を収めた円盤も発売されていて、

多くの方へおすすめできるお芝居。


続編あったならめっちゃ嬉しい。

新たなテクノロジーの登場で騒動再びみたいな、はたまた

おおさか新世界とは別の場所&新たな登場人物で

わちゃわちゃする展開とか。


「へび女」……


新年おめでとうございます。


   /   /   /


楳図パーフェクション!1「へび女」

2005年9月1日 初版第一刷発行 / 小学館 / 1143円+税


三作品収録、すべて“へび女”のお話。

収録されてる順に読み進めていく、と、

最後の作品のラストが最初の作品へつながるそんな構成、

自らのしっぽをくわえた輪っか状のウロボロスを想起させる、

“永遠であり不滅”の恐怖、その円環。


   /   /   /





いつ読んでもこころ鮮やかに戦慄。